コラム

工場・倉庫の暑さ対策 同じ色でも屋根表面温度に最大22℃の差。「遮熱塗装」の効果と注意点をプロが解説

工場・倉庫の暑さ対策 同じ色でも屋根表面温度に最大22℃の差。「遮熱塗装」の効果と注意点をプロが解説

夏になると、工場や倉庫のご担当者様から、

「屋根からの熱気がすごい」
「空調を入れても建物の上部がなかなか涼しくならない」
「従業員の熱中症対策として何かできないか」

といったご相談をいただくことがあります。
こうした建物の暑さ対策として検討される方法の一つが、屋根の遮熱塗装です。
ただし、遮熱塗装をすれば、どの建物でも同じように室温が下がるわけではありません。
屋根の材質や断熱材の有無、天井の構造、建物の用途、換気量、空調設備などによって、その効果は大きく変わります。

今回は、遮熱塗装がどのような仕組みで屋根の温度上昇を抑えるのか、当社で確認した実測データを交えながら、効果が期待しやすい建物と、採用する際に知っておきたい注意点をご説明します。

■遮熱塗料は「太陽光を反射して、屋根が熱くなるのを抑える塗料」

太陽光には、紫外線・可視光線・赤外線など、さまざまな波長の光が含まれています。
屋根に当たった太陽光の一部は反射しますが、反射されずに屋根材や塗膜に吸収されたエネルギーは熱に変わり、屋根の表面温度を上昇させます。

遮熱塗料は、一般的な塗料よりも日射を効率よく反射し、屋根が吸収するエネルギーを少なくすることで、表面温度の上昇を抑える塗料です。
特に、着色塗料では近赤外線領域を反射しやすい顔料などを使用することで、通常の同系色塗料よりも高い日射反射率を持たせることができます。

つまり、
「熱を発生してから遮る」のではなく、「そもそも屋根に熱をためにくくする」という考え方です。
環境省も、高反射率塗料による屋根の高反射化について、屋根表面温度の低下や最上階への熱侵入低減、空調負荷軽減につながる技術として紹介しています。

「遮熱」と「断熱」は違います。
ここはよく混同されるところです。

遮熱は、太陽光を反射して、屋根や外壁そのものが熱くなることを抑える考え方です。
一方、断熱は、断熱材などによって屋外と室内との間の熱移動を小さくする考え方です。

塗料の中にも「断熱」をうたう製品がありますが、塗膜は一般的な断熱材と比較すると非常に薄いため、グラスウール・ロックウール・ウレタンフォームなどの断熱材と同じように考えるべきではありません。

なお、遮熱塗料は一般的な呼称です。JIS K 5675は、「屋根用高日射反射率塗料」として規格化されています。 

■実測データでは、同じN-6グレーで最大22℃の差

「遮熱塗料を塗れば涼しくなります。」と言うだけでは、その効果は分かりにくいものです。
そこで当社では、通常塗料と遮熱塗料を同じ色にそろえた試験体で、表面温度を比較しています。
使用した色は、日本塗料工業会のN-6グレー。
色による温度差の影響をできるだけ除き、通常塗料と遮熱塗料の違いを比較しました。
その結果、気温が高くなる13時前後に、

・通常塗料 71.5℃
・遮熱塗料 49.5℃

となり、屋根表面温度には最大22℃の差が確認されました。

また、赤外線ランプによる照射試験でも、30分後に通常塗料76℃、遮熱塗料63℃と、13℃の差を確認しています。
ここで重要なのは、「白くしたから温度が下がった」のではなく、同じN-6グレーで比較しても差が出ているという点です。

ただし、この22℃という数字は、あくまで当社が行った試験条件下での最大値です。
屋根の色・日射量・外気温・風速・屋根材・塗装仕様・汚れの程度などによって結果は変わるため、「遮熱塗装をすれば必ず22℃下がる」という意味ではありません。 

■遮熱塗装の効果が期待しやすいのは「断熱の少ない金属屋根」

遮熱塗装の効果を考えるとき、単純に「鉄骨造だから効く」「RC造だから効かない」と構造種別だけで判断することはできません。より重要なのは、屋根から室内までの構成です。

特に効果を期待しやすいのが、断熱材が入っていない、または断熱性能が低い折板屋根・金属屋根の工場や倉庫です。

薄い金属屋根が日射を受けると、夏場には屋根表面が非常に高温になります。
その熱は屋根裏側へ伝わり、さらに室内側へ放射されるため、屋根直下で作業する人が強い暑さを感じる原因の一つになります。
そのため、屋根表面の温度上昇そのものを抑える遮熱塗装は、こうした建物では合理的な対策になり得ます。

反対に、屋根に十分な断熱材が施工されている建物、屋根と室内との間に天井や大きな空間がある建物では、屋根表面温度が大きく下がっても、その変化がそのまま室温低下として現れるとは限りません。

高日射反射率塗料の直接的な効果は、まず屋根などの外表面温度を下げることであり、室温や冷房負荷への効果は建物条件に左右されることが研究でも指摘されています。

また、住宅でも「効かない」わけではありません。
遮熱塗装によって屋根表面温度を抑える効果は期待できます。

ただし、近年の住宅では断熱材、通気層、小屋裏、天井などが介在していることが多いため、工場の無断熱折板屋根などと比較すると、室温への効果が小さくなる場合があります。

大切なのは、「住宅か工場か」だけで判断するのではなく、屋根の構造を確認することです。
RC造についても同様です。
コンクリートは単純に「熱を伝えにくい」のではなく、厚みと大きな熱容量を持つため、金属屋根とは熱の伝わり方や時間変化が異なります。

そのため、遮熱塗装の効果は屋根屋上の構成・断熱仕様・躯体厚・建物用途などを含めて判断する必要があります。

■2025年から強化された職場の熱中症対策

2025年6月1日、改正労働安全衛生規則が施行され、職場における熱中症の重篤化を防ぐための対策が強化されました。

対象となるのは、WBGT28度以上、または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業です。

対象となる作業では、熱中症のおそれがある人を早期に発見するための報告体制の整備や、作業離脱・身体冷却・医療機関への搬送などの実施手順の作成と周知が事業者に求められています。

ここで注意したいのは、遮熱塗装そのものが法律で義務付けられたわけではないということです。
ただし、工場や倉庫では、報告体制や応急対応だけではなく、できる限り暑熱環境そのものを改善したいというご相談も増えています。

遮熱塗装は、そうした作業環境改善を考える際の選択肢の一つです。
特に、断熱材の少ない折板屋根の直下で長時間作業するような施設では、検討する価値があります。

■遮熱塗料はなぜ通常塗料より高くなるのか

遮熱塗料と通常塗料の大きな違いの一つが、顔料設計です。
通常の黒色顔料として広く使用されるカーボンブラックは、可視光だけでなく近赤外線も吸収しやすいため、日射反射率を下げる方向に働きます。

そのため遮熱塗料では、色によっては近赤外線を反射しやすい特殊な顔料を使用するなど、同じような外観を保ちながら日射反射率を高める工夫がされています。

また、製品によっては樹脂、添加剤、下塗り材などを含めた塗装システム全体で遮熱性能や耐久性を設計しています。

したがって、「通常塗料と中身は同じで、顔料だけが違う」とは一概に言えません。
特殊顔料などの原材料や製品設計によって、一般的な屋根塗料より材料価格が高くなる傾向があります。

■遮熱性能は「色」によって大きく変わる

遮熱塗料を選べば、どの色でも同じ性能が得られるわけではありません。

一般的には、白や淡色の方が日射反射率は高く、黒・濃紺・濃いグレーなどは低くなる傾向があります。
遮熱塗料の日射反射率は色によって大きな差があります。

ただし、ここで比較したいのは、「白の遮熱塗料」と「黒の遮熱塗料」だけではありません。
同じ濃い色であっても、通常塗料より遮熱塗料の方が高い日射反射率を持つ場合があります。

したがって、「デザイン上、この色は変えたくない」
という工場や店舗であっても、同系色の遮熱塗料を選択することで、通常塗料より屋根の温度上昇を抑えられる可能性があります。

一方で、遮熱効果を最大限に優先するのであれば、可能な範囲で明るい色を選択することも重要です。

■汚れや経年劣化によって遮熱性能は変化する

遮熱性能は、塗った直後の数値だけを見ればよいわけではありません。
屋根に砂ぼこり・すす・排気ガスなどの汚れが付着すると、表面の日射反射率が低下することがあります。
特に幹線道路沿いや工業地域などでは、屋根の汚染状況も考えておく必要があります。

また、塗膜そのものも紫外線や雨風によって徐々に劣化していきます。
実際、高日射反射率塗料については、屋外暴露後の遮熱性能の経年変化について長期的な研究も行われています。

そのため遮熱塗料を選ぶ際は、初期の日射反射率だけでなく、耐候性や低汚染性を含め、長期間性能を維持できるかを見ることも大切です。

■夏にメリットがある一方、冬の日射熱も減少する

遮熱塗料は、季節によって日射を選別するわけではありません。
冬季にも太陽光を反射するため、屋根から取得できる日射熱は少なくなります。
そのため、建物条件や地域によっては、冬期の暖房負荷がわずかに増える可能性があります。
ただし、これを単純に「遮熱塗料を塗ると冬は寒くなる」と言い切るのも適切ではありません。

実際の室温への影響は、屋根の断熱性能、暖房設備、建物の熱容量、地域の気候などによって大きく変わります。
工場や倉庫で遮熱塗装を検討する場合には、夏季の暑熱環境改善によるメリットと、冬季の日射取得低減の影響を比較して判断します。

まとめ|遮熱塗装は「建物を見てから判断する」ことが大切

遮熱塗装は、屋根の暑さ対策として非常に有効な選択肢になり得ます。
特に、断熱材が少ない折板屋根や金属屋根の工場・倉庫では、屋根表面温度を下げることが、作業環境の改善につながる可能性があります。

一方で、遮熱塗料は「塗れば必ず室温が○℃下がる」という製品ではありません。
効果を左右するのは、屋根材だけではなく、断熱材の有無・天井・換気・空調・建物用途・色・周辺環境などです。

当社の試験では、同じN-6グレーで通常塗料と遮熱塗料を比較したところ、屋根表面温度に最大22℃の差が確認されました。 

しかし、この数字だけで遮熱塗装をおすすめするのではなく、
「その建物で、本当に遮熱塗装が有効なのか」を確認することが何より大切です。

場合によっては、遮熱塗装だけでなく、断熱改修・二重屋根化・換気設備や空調設備の改善など、別の方法や組み合わせの方が適していることもあります。

アケボノでは、屋根の種類・断熱仕様・劣化状況・建物の使用環境などを確認したうえで、最適な改修方法をご提案しています。
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